霜小倉5/100
奥の間に揉めよ舐めよとまくしたつ
声聞くのみにぞかくは悲しき
/猿腰丸
現代語訳
奥の部屋で「揉んで舐めて」とまくしたてている。その声だけを聞きながら独りでするのは悲しいことであるよなぁ。
解説
奥さんと仲たがいをしたのでしょうか。
部屋にとじこもったまま出てこないで、あえぎ声だけが聞こえる。
呼びかける口調で激しく声をあげています。
「揉んで!舐めて!」とまくしたてている。
まさか男を連れ込んでいるわけではないだろうな。
しかし部屋に入ると怒られるのでしょう。
猿腰丸は部屋の外にいます。
外にいて、奥様のあえぎ声に興奮している。
自慰だろうか?不義だろうか?
そのどちらかはわかりませんが、
どちらにしても興奮してしまったのですね。
興奮して、猿腰丸は自慰をいたした。
そして
声聞くのみにぞ
かくは悲しき
係り結びによる軽い強調。
ことが済んだあとなのでしょう。
悲しきという言葉のなかにむなしさも感じられます。