かくかくしもじも

ここにはシモネタしかありません。

霜小倉21/100

きなこもち いいしばられに 名は尽きぬ ありたけのつゆを 待ち出でつるかな 
/素世路

 

 

 

 

現代語訳
 

まるできなこもちのような素晴らしい縛られ方に私は、名前も人としての尊厳も失い、ただのブタになりました。たっぷりの聖水をくださるのを待っている間にありったけ射精してしまいました。

 

解説

 

作者の素世路(そせじ)は平安前期から中期にかけての歌人で僧侶。

父は霜小倉12番

smnlife.hatenablog.com

に歌が残る変常。

 

【きなこもち】

唐突です。唐突過ぎるきなこもち。もちだけならこれは大したことはない。ただ太っている人がしばられて、麻縄の隙間からもちもちに脂肪をはみ出させながら身動きが取れなくなっているだけです。それがなにやらきなこもち。

どういうことで素世路は「きなこもち」などということを思いついたのでしょうか。

 

それは……

庭にけり落とされて砂まみれになったのでしょう。

 

縛られてただ転がされているときは、「ああ、俺はまるでもちのようだ。たぷたぷで身動きも出来ない」じっとり汗をかいて。それはそれで心地よいのですが、そこでいきなりけり落とされた。

なにが起こったのか!?え!?砂だらけじゃん。もちの気分台無しじゃん、、え?あ、きのこもち!これはきなこもちだ!しかも食えないきなこもち。俺は食えないきなこもちだ。かわいそう。かわいそうな俺。

 

【いいしばられに名は尽きぬ】

なんといういい縛り。いいプレイなのだ。まるでゴミだ。俺はゴミだ。僧正の子なのに。天皇のひ孫なのに。いまでは食えないきなこもちだ。

 

【ありたけのつゆを 待ち出でつるかな】

「待ちいづ」は、「待っていたら出てきて会った」という意味です。

待っているのは作者の素世路です。ありったけのツユ、甘露、つまり聖水で洗い流してもらいたいと待っていたら、「出でつるかな」完了の助動詞「つる」に、詠嘆の終助詞「かな」がついています。ああ、出てしまった。なにが?己のツユが。ツユ違いだ。なんてことだ。

 

きなこもち状態のままかってに絶頂をむかえてしまい、さらに女王様にしかられてしまう、、いや叱って、もらえるというよろこびを見事にあらわした歌だと思います。

親に兄もろとも無理やり僧にさせられて変態になってしまった素世路。

しかし変態といえどこれほどまでに鋭い歌がかけるなら、変態もわるくないとおもいませんか?