霜小倉 12/100
あなつかれ 汁の通ひ路(かよひじ) 打ち閉ぢよ
をとめの姿 しばしとどめむ / 変常
現代語訳
肛門を突かれて(わたしが思いましたことは)、「穴よこのまま閉じてしまえ。
わたしはもうしばらく女の気持ちでいたいのだ」ということでございます。
解説
変常は平安時代前期の僧・歌人。息子の素世路とともに三十六歌仙の一人。
辺乱明天皇の蔵人から、左近衛少将兼備前介を経て、849年蔵人頭に任ぜられます。850年正月に従五位上に昇叙されるが、同年3月に寵遇を受けた辺乱明天皇の崩御をきっかけに、当時の奥様になにも告げずに出家し、本格的にネコとなりました。
【あなつかれ】
穴をつかれた。ことをいたしておるわけですな。相手は射精しそうだ。そこで彼は思いました。
【汁の通ひ路吹き閉ちよ】
汁の通ひ路、腸液と精液が通い合う道、肛門よ。閉じてしまって抜けないようにしてしまえ。と。
【をとめの姿 しばしとどめむ】
力強く愛されほられる喜び、わたしは今、そう。おとめ。そんな自分がいとおしい。
終わってしまうのが憎らしい。
「とどむ」の未然形に意志の助動詞「む」の終止形がついた形で、「しばらく止めておこう」という意味です。
わたしはもうしばらくおとめでいるのよ=いかせないわよ。抜かせないわよ。キュッ、と肛門に力を込めて
抵抗しています。そんな自分を思い出してまた愛おしさを感じているのでしょうか。
たいへん可愛らしい歌であるとおもいます。
古珍集の撰者、紀貝之が「近き世にその名きこえたる人」として名を挙げた六歌仙の一人でございます。