霜小倉 2/100
春すぎて なお日に照りし 色妙に
ことを欲すてふ 尼の嗅ぎやな
/鼻長皇子
現代語訳
発情期である春を過ぎてもなお逞しく日に照らされて黒光りしている。
その妖しい色気に、抱かれたがるという噂の尼僧が鼻を鳴らしているのだなぁ。
解説
季節は春の終わり。動物たちの発情期も終わったころである。
鼻長皇子が散歩をなさっていた。尼寺にさしかかったところでおかしな音が聞こえてきた。
「なんだろうな?」辺りを見回してみる。
ひとりの男が勃起した陰茎をほうりだして立っていた。
なるほど立派な男根である。
ははぁん。このおかしな音は、そうか。
話に聞く、色情狂の尼僧がこの尼寺の中で秘め事を欲して、この男の匂いを必死で嗅ごうとしている音だな。
出家したとはいえ、煩悩というものはなかなか断ち切れぬものであるよなぁ。
命の力強さと人間の弱さを詠った傑作である。