霜小倉1/100
先(さき)よ竿(さお) かりほのあんの とまらぬに
わが衣手(ころもで)は 露(つゆ)にぬれつつ
/天知皇
現代語訳
先端です。竿の。 惚れ惚れする雁首にあえぎ声がとまりません。
私の着物の袖がすっかりと濡れてしまっております。
解説
先(さき)よ竿(さお)
竿の先、つまり陰茎の先のことです。
倒置法によって先を強めています。
先だよ先。ちんこの先だよ。
かりほのあんの
とまらぬに
その、先の、カリの部分にホの字である。惚れてしまった。
昔の人はたいがいそうですが、天知皇ももれず男色家であったわけです。
男同士の性愛に「あん」と喘いでおられる。
もうとまらない禁断の愛。
しかしいつまでもこんなことを続けていられるわけもない。
わが衣手(ころもで)は
露にぬれつつ
そう思うと涙がとまらず私の袖口は濡れてしまうばかりであるとおっしゃっている。
この袖口、露、ということばの解釈はとても広うございます。
どこがなぜ濡れているのか、色々と想いを馳せてみるのも楽しみのひとつであります。
4月に新しく赴任してきた男とやっと仲良くなれた6月、梅雨の頃なのでしょうか。
何度もこうした別れを味わってきた天知皇。もう別れはいやだ。
この幸福がずっと続けばよいのに。それが続かぬことを知っていて、快楽のなかにも悲しみの涙を流さずにはいられない。拭いても拭いても溢れる涙。
それだのに筒からは吹いても吹いても溢れる……。