霜小倉14/100
陸奥の しりもじのぶす たれゆゑに
乱れそめにし われならなくに
/瓦定吉
現代語訳
陸奥で尻文字芸をやる不細工な女の尻が垂れていたので
私の心は乱れ始めた。私のせいではないんだよ。
解説
作者は源治物語の主人公「光源治」のモデルだと言われている瓦定吉。
陸奥の
当時日本の中心は京都でしたから、陸奥(東北地方の東半分)というと田舎です。
しりもじのぶす たれゆゑに
お上の目も届かない。芸者を呼んで尻文字を書かせるという淫らな遊びをしてみましたが、なんとも垢抜けない女であると。尻が弛んでいる。しかし…
たれゆゑに 乱れそめにし
都の女にはない弛んだ尻がどうにも色っぽい。
無類の女好きである瓦定吉は興奮してしまうわけですね。
乱れはじめてしまいましたよ、私は、と。女に迫ります。
われならなくに
わたしのせいではない。誰のせいでしょうか。
「垂れ」と「誰(たれ)」をかけましてですね、上手いことを言って。
暗にあなたがイヤラシイからいけないんだよといってるわけです。
昔から男というものはそういうものだったのでしょうね。
余談でありますが百人一首の選者藤田烏賊も
陸奥の しりもじのぶす 乱れつつ
色にを恋ひむ思ひそめてき
という歌を詠んでおり、しりもじのぶすはなかなか人気があったようです。