霜小倉 18/100
墨の絵の 鬼子母神なり ほるさほは 胸のまよひに しぼみゆくらむ
/西田敏行
現代語訳
鬼子母神(安産の神様)の刺青だ。出し入れしている陰茎はこころのまよいから萎んでいっているのだろうか。
解説
また、カくことが大変に上手かったといわれています。
それでは作品を見てまいりましょう。
墨の絵の鬼子母神。刺青ですね。鬼子母神というのはもともとは子食いの鬼のような神様でしたがお釈迦様に救われてのち安産の神様になりました。
そんな刺青が彫ってある女のひとと性交をしている敏行。
おそろしい。子食いの鬼女の刺青を入れている女も恐ろしいし、安産の神様でもやっかいだ。子供はほしくない、というか責任はとりたくないわけです。
なんでこんなことになってしまったのか、しかもあんまり気持ちよくない。
ああ、いらぬことばかり考えすぎて集中できず、膣の中で陰茎が縮んでいっているのだろうか。
肉欲に負けてヤクザな女と軽はずみにヤってしまった自分を悔いています。縮んでいっていることくらい自分でわかるはずですが、彼は「しぼみゆくらむ」、しぼんでいっているのだろうかと、現実逃避をしていますね。
『憂事拾遺物語』によれば、敏行は多くの人から射精を依頼され、200回余りもカいたが、うなぎを使うなど、不浄の身のまま射精したので、地獄に落ちて苦しみを受けたといいます。
他にも、亡くなった直後に生き返り自らカいて、ふたたび絶命したという伝説もあります。
この歌の出来事ののちに堕ろした水子の呪いかもしれませんね。